ザ・グレンリベット。
スコットランドはスペイサイド地方の
シングルモルトウイスキー。
お客さんのY氏がバックボードを指差して
「12年と18年あるけど、味はどうなの?」
「最近品質が落ちるウイスキーが多い中、
クオリティを保っている数少ないウイスキーだと思います」
そう答えたわたし。
かつて、他の蒸留所がこぞって
グレンリベットの名を使用したほど、
その品質の高さには定評があったのです。
その名の無断使用を阻止するかのごとく
我こそはグレンリベットと示したその象徴が
名前の頭に来る「THE」なんですって。
「THE GLENLIVET」
「じゃあ、飲んでみるかな。
ふたつともストレートで」
となりまして、テイスティング大会へ突入。
「12年もなかなかのものですが、
18年と比べられるとかわいそうですね。
この値段でこの味、
18年は特にコスパが優れていると思いますぅ」
わたしの独断の説明にうんうんと頷き、グラスを傾けるY氏。
ちなみに、わたしの店では一部のお客さんが
ボトルキープをしておられます。
Y氏もその一人で、話の流れから察するに、
どうやらキープしたい酒を探してるようです。
そして、
「うん、やっぱこれにする」
と、ボトルキープされたのは、
ザ・グレンリベット12年。
満足げに帰路につくY氏の遠い背中に、
わたしは思わずつぶやき投げます。
俺の話はなんだったんだろ……。
そしてそのときふと、
思い出した出来事が。
これ空いたから次回、同じの入れるね。
そうそう、確かに言ってた。
同じのキープするって。
でも……たぶん忘れてるだろうな。
今日、リベット入れたぐらいだから。
同じのキープするってこと。
ロイヤルハウスホールド
そう……
絶対に忘れてる。