じめじめと蒸し暑い夜。
「こんなときは何を飲んだらいいの」
「こんなときとは?」
「こんなときはこんなときよ。蒸し暑くてうっとうしいでしょ」
ああ、なるほど。
こういうことを聞かれても困るのだ。
ましてや相手は常連さん。
たいがいの酒は飲みつくしておるのだ。
「じゃー暇だし、パーッといきますか」
「ん、なになに?」
「テキーラで」
我ながら安易な発想だと思ったが、
酒飲み女史の反応は意外なほどよかった。
かつてテキーラにはまったことがあって、
ありとあらゆるテキーラを飲んだ。
少なくとも50種類以上は飲んでいる。
いろんな飲み方があるが、
わたしの好みはストレート。
チェーサーにトマトジュースを添えて。
これがあると塩とかライムはいらない。
ロングにするならストローハット。
これはトマトジュースで割るカクテル。
結局はトマトジュースが合うのだろうか。
ショットグラスに注いだテキーラを
塩を舐めていっきに飲み干すスタイルもある。
飲んだあとにライムをかじれば
アルコールの強さは不思議なほど感じない。
うまいことはうまいが、数杯で酔う。
「じゃあ、まずはマルガリータで」
「アイアイサー」
クエルボのホワイトをベースに手早く作ると、
わたしは同じクエルボのゴールドをストレートで。
「テッキーラ!マルガリィィータ!」
意味不明なテンションで乾杯。
それから女史はマルガリータをお替りし、
腹が減ったというので、
ポテトフライ&タバスコinケチャップを。
これがテキーラに結構あうのである。
そろそろ作るのが面倒になってきたので、
「テキーラはストレートがおいしいよ」
と100%アガベのアネホに切り替えさせ、
二人して杯を重ねた。
気がつくと閉店時間はとうに過ぎており、
外はセミの大合唱とともに、
二個も太陽があるほどに明るかった。
「だめ、今日は使い物にならない」
「仕事じゃなかったっけ?」
「休む」
あららら、ごめんなさいね。
教訓。
テキーラを深く飲むときは、
休日前にしましょう。