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【バーテンダーのブログ】バベルの塔

意外に美術館好きのわたし。
お客さんがチケットをくださった。
国立国際美術館、バベルの塔展。

ブリューゲル作【バベルの塔】

【バベルの塔】

バベルの塔……。
ひょっとして
バビル二世が住んでいたやつ?

地球に飛来したバビル一世が造った
難攻不落の大要塞では?

その数千年後、
内部のコンピューターが選んだ住人が
たしかバビル二世だったような……。
自慢じゃないけど、
そのくらいの知識しかない。

ということで
たまたまヒマだったので、
いざバベルの塔へ。

知識もないので、
音声案内のヘッドフォンとともに
鑑賞すること一時間。

うーむ……さすがはブリューゲル。
その細やかな作品の数々。
訪れた価値は十二分と確信。

最後の一枚、
バベルの塔はさすがに長く並んだけど、
ただただ満足して美術館をあとに。

その帰り、久しぶりに立ち寄った居酒屋。
愛想は三流、味は一流という店。

「…っしゃい」
毎度まいど、
何が気に入らないのか、
おそろしく愛想のない声に迎えられる。

美術鑑賞のあとはワイン。
てな気分だったが、
そんな気の利いた飲み物はここにはない。
仕方がないので燗酒を頼み、
ツマミにかき揚げを注文する。

えらく遅いな……と思いつつ、
お銚子をお替りする。
しばらくすると、
とんでもないものが出てきた。

三段重ねになったかき揚げを
バイトのおばちゃんがぐらぐらと
恐る恐る運んでくる。
これか、遅かった理由は。

聞けば、三種類のかき揚げだとか。
重ねる必要があんのか?

しかも大容量。
完食できるだろうか。
内容量をきちんと記したほうが
いいと思うな。

しかし、よくみるとこれ、
何かに似てないか……。
そうだ、バベルの塔?

「マスター、これバベルの塔って名にしたら」
思わず口にした提案に、
マスターの反応は?
「なんすか、それ」
さすが無愛想。
期待は裏切らない。

バベルの塔の存在は神話とされている。
旧約聖書の「創世記」中に登場する
巨大な塔なのだが……
紀元前6世紀、
バビロンにあった遺跡とする説もある。

どちらにしても、
そのようなおごそかな建造物に
こっそりとバビル二世が住んでいたなんてこと、

そして、不愛想な居酒屋の
肴のネーミングに提案されたこと、

偉大な画家ブリューゲルは
想像さえできなかったろう。

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