あと、もう一杯だけ。
ドラマなどではよくある光景ですが、
実際にあるんです。
帰宅時間が過ぎたシンデレラは
家路を急いで階段を駆け下りるけど
こいつはそんなことは気にしない。
閉店時間あたりに変身する、
人、呼んで
『妖怪、粘りのシンデレラ』
別にたかが一杯飲む時間ぐらい
どうってことないんですけどね。
でも、腹ン中ではこう思ってます。
わたしの仕事は営業時間だけじゃねえんだよ~
今から掃除があんだよ~
明日も仕込みがわんさかあんだよ~
なんてね。
でもね、嫌いじゃないんです。
掃除とか、仕込みとか。
掃除機をかけながらそのゴミを見て
今日もお客さんありがとうと思うし、
丸氷なんか削ってるときは
誰々の飲む姿なんかを想像するし、
酒の肴を作ってるときは、
これは誰々さんが好きそうだなって思うし。
ちょいと話がそれました。
この店が好きで来てくれて、
あと一杯飲みたくなって、
ついそう言ってしまう。
気持ちはわかりますし、
うれしいな、とも少し思います。
が……、
やっぱりね、
いちおう決めごとですからね。
ごめんなさいね。
と思いながら、結局は一杯お出ししたのですが。
で実際、そのシンデレラがお帰りになったあと、
掃除を終え、ほっとして、
なんだか帰る気がしなくなって、
つい一杯飲んでしまって、
結局さらに遅くなってしまった……。
アホだな。