ワイン
ワインはブドウを原料とした醸造酒でその性質から、発泡性ワイン(スパークリングワイン)と非発泡性ワイン(スティルワイン)に分かれます。
スティルワイン
【赤ワイン】
赤ワインは、果皮が黒や紫、赤などの色のついた黒葡萄を使ってつくられるのが一般的です。
赤ワインの場合は、黒葡萄の果汁だけではなく果皮や種も丸ごと使います。
まず葡萄を破砕機を使って、果皮が軽く破ける程度に果実をつぶし、果汁を出します。つぶした果汁や、果皮、種も一緒に発酵槽に移します。
発酵は、28℃から30℃の温度で行われます。 無水亜硫酸を添加して天然の酵母や雑菌が死滅を死滅させ、純粋培養酵母を加えて約1週間発酵させます。
発酵が進むにつれ、炭酸ガスが発生して葡萄の果皮が発酵槽の表面に押し上げられます。そのままの状態だと果液の温度も過上昇や、有害微生物が発生する危険があるため、果液をまぜまぜして表面に押し上げられた果皮を果液の中に押し戻し、常に果皮が果液の中に浸っているようにします。
これは非常に重要な工程で、果液中の果皮や種から溶け出した色素やタンニンにより赤ワイン独特の色や渋みがうまれるのです。これらの工程を第一次発酵といいます。
発酵が終わると、果皮や種を発酵液に浸した状態でしばらくおきます。これをかもしと呼びまして、その時間によって飲み口の重さの違いが生まれます。
発酵とかもしが終了して充分に色が出たら、発酵槽の底から発酵液を引き抜きます。(引き抜き酒)
残った果皮と種の粕には、まだ多くの発酵液が残っているので圧搾して取り出します。(圧搾酒)
引き抜き酒と圧搾酒は、それぞれ糖分が完全になくなるまで発酵させ続けます。この工程を後発酵といいます。
後発酵が終了した発酵液は、時間の経過とともに酵母や酒石が沈殿して澱となり、貯蔵タンクの底に溜まっていきます。 発酵液から澱を取り除くために、上澄みだけを別に移します。これを澱引きといいます。
澱引き後、出来上がった赤ワインは、樫樽に移されて、通常1~2年の熟成をさせます。
熟成後、清澄、ろ過されて、瓶詰めされます。 長期熟成のワインはここからさらに瓶熟成させます。
【白ワイン】
白ワインは、果皮が薄緑色の白葡萄を使ってつくられます。 赤ワインと違い、葡萄の果皮や種を使わずに果汁だけを使います。
葡萄をつぶして果汁を出すまでは赤ワインと一緒ですが、そのあと赤ワインが発酵槽に移されて発酵とかもしが行われるのに対して、白ワインの場合はまず圧搾の工程に移ります。
圧搾で取り出された果汁には、葡萄自身の重さで自然に流れ出たフリーラン・ジュース(全体量の約80%)と、圧力をかけられて搾り出されたプレス・ジュースの2種類があります。 フリーラン・ジュースは上質な白ワインのげんりょうとされだとされています。 プレス・ジュースは、圧し潰した果皮の成分が影響して、渋みのある個性的な白ワインの原料となります。
圧搾が終了したら、発酵です。 赤ワインと同じく、無水亜硫酸を添加してから約2週間ほど第一次発酵が行われます。 白ワインの発酵は、通常13~18℃の温度で行われますが、最近では10~15℃の低温発酵も行われているようです。
第一次発酵が終了すると、赤ワイン同様に上澄みだけを別に移す澱引きの作業が行われます。
白ワインの熟成は、貯蔵タンクで熟成させて比較的早いうちに飲むタイプと、樽で熟成させるタイプがあります。
熟成が終了したワインはろ過後、瓶詰めされます。 瓶詰め後はさらに瓶熟成が進みますが、赤ワインほどの熟成効果がないため、早い段階で飲み頃を迎えます。
【ロゼワイン】
赤ワインと同じように、果皮が黒や紫、赤などの色のついた黒葡萄を原料とし、黒葡萄の果汁だけではなく果皮や種も丸ごと使い、その醸造工程にはいくつかの種類があります。
黒葡萄の短期かもし | 発酵液に黒葡萄の果皮と種を漬け込んで発酵し始めたら、発酵液が薄いバラ色になったところで果汁だけを引き抜き、果皮と種を分離します。 その後アルコール度を高めるため、 無水亜硫酸を添加したのち、酵母を加えて発酵させます。 |
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黒葡萄の搾汁発酵 | 黒葡萄の場合は、圧搾して果皮と種を取り除いても果汁に多少の色素が残っていて薄いバラ色の果汁が得られます。この果汁に無水亜硫酸を添加したのち、酵母を加えて発酵させます。 |
混醸式 | 黒葡萄と白葡萄を混ぜて醸造します。また、フランスのシャンパーニュ地方だけに許可されている、赤ワインと白ワインを造り、出来上がったそれらのワインを混ぜるという方法があります。 |
スパークリングワイン
発泡性のワインの総称。その代表的なものとしてフランスのシャンパーニュ地方で造られるものに限ってシャンパンと名乗ることができます。発泡性のワインがイコール、シャンパンだと思われる方も多いですが、正確にはシャンパン以外の発泡性ワインをスパークリングワインと呼びます。
二酸化炭素を多く含み、開栓すると圧力が下がって二酸化炭素が気泡として立ち上ってきます。
発泡性ワインには、瓶内発酵のために二酸化炭素が溶け込んでいるものと、人工的に二酸化炭素を吹き込んだ、いわゆる炭酸ワインとがあります。
【スパークリングワインの製法】
シャンパーニュ方式
下記のシャンパンの項で説明します。
シャルマ方式(もしくは密閉タンク式):
シャンパーニュ方式においての瓶内発酵の際の澱抜きの工程を簡略化するために開発された方式。 第二次発酵を耐圧タンク内で大量に行い、発酵が終了した後も耐圧タンク内を密閉して加圧したままろ過します。そして甘みを加えるためにリキュールを添加して瓶詰めを行います。
トランスファー方式
第二次発酵まではシャンパーニュ方式と同じように瓶内で行われますが、一連の澱抜き作業の工程で、瓶ごと冷却され、密閉して加圧されたタンクに集められます。そしてタンク内で澱がろ過され、リキュールを添加して再び瓶詰めされます。
炭酸ガス注入方式:
通常の醸造方法でワインをつくり、そのワインを冷却、加圧して炭酸ガスを直接注入する方法です。最も安価で手間がかからず、大量生産が可能な方法なので、広く一般にこの方式がとられています。しいて言うなら、こういうのをスパークリングの分類からは除外してほしい気分です。
【生産場所によるスパークリングワインの呼称】
フランスのシャンパーニュ地方:シャンパン
フランスのシャンパーニュ以外の地域:クレマン、ムスーもしくはヴァン・ムスー、ペティヤン
スペイン:エスプモーソ、カバ
イタリア:スプマンテ、フリッザンテ、ランブルスコ
ドイツ:ゼクト
ボジョレーヌーボー
ボジョレーヌーボーはスティルワインの一種ですが、通常のスティルワインと製法が異なるので、こちらに別途記載します。
そもそも、ボジョレーヌーボーとはなんなのか?
ボジョレーヌーボーのボジョレーとは、フランスのブルゴーニュ地方のボジョレー地区、すなわち場所のことです。そして、ヌーボーとは新酒という意味です。
したがってボジョレーヌーボーとは、ボジョレー地区の今年の新酒ということです。
ボジョレーヌーボー解禁!
いったいなぜ、こういった行事ができたのでしょうか。そもそもボジョレーヌーボーは、地元の人達だけが楽しむ、いわば地酒のようなワインでした。
それが1951年、フランス政府によって販売が認められると、またたく間に評判となりました。各ワイナリーは少しでも早く販売しようとした結果、質の悪いワインが出回るようになったのです。このようなことを規制するため政府は1967年、解禁日を11月11日(聖マルティヌスの日)に設定しました。
その後、11日から15日に変更されたのですが、解禁日が日付であったため、その日が日曜の年には流通業者やレストランが休日となって、ワインが出回らないという不具合が発生してしまいました。そういう販売に影響が出ないようにと1984年、現在の11月第三木曜日に解禁日が定められたのです。
【ボジョレーヌーボーの製法】
ボジョレーヌーボーはマセラシオン・カルボニック(炭酸ガス浸漬法) という特殊な製法で造られます。それはボジョレーヌーボーが製品化される期間、すなわちブドウを摘み始めてからワインが出来るまで、わずか二か月という早さに表わされています。
まず収穫したブドウを除梗・破砕せずそのまま発酵タンクに入れます。すると、ブドウの重みによって下のブドウから自然に果粒がつぶれて液面が上昇し、発酵が始まります。
発酵が始まると炭酸ガスが発生し密閉タンクの中はガスで充満します。そんなタンク内では酵素によってつぶれていないブドウの酵素の働きによってリンゴ酸が分解され、アミノ酸、コハク酸、アルコールなどが生成されます。
このときにブドウの果皮からも成分が浸出し、色が溶けだしていきます。ボジョレーヌーボーの色が味に比べて濃いのはそのためです。そしてなおもタンクの圧力が上がりつぶれていないブドウもその圧力でつぶれていきます。そうして苦みの少ないフレッシュな味わいのワインが生まれるのです。
発酵期間は温度によって異なりますがだいたい10日前後というところです。
ボジョレーヌーボーの中で、ワンランク上のヌーボーにボジョレーヴィラージュヌーボーがあります。ヴィラージュヌーボーは通常のボジョレーに比べ、果実味が多くて濃厚なのが特徴です。38のコミューン(地区)から収穫したブドウだけを使用します。これはボジョレー全生産量の25%を占めています。
ワインの新酒はボジョレーが有名ですが、何もボジョレーだけではありません。イタリア、ドイツ、オーストリアなど各国にあります。日本でも山梨ヌーボーが解禁日を11月3日になっています。ちなみに各国の新酒解禁で一番早いのが10月30日のイタリア。イタリアでは新酒をヌーボーと言わずノヴェッロと呼びます。
テイスティングについて
ワインを注文するとソムリエ、もしくは店のスタッフが開栓してワイングラスに少量注いでくれます。これをテイスティングといいます。
まれに勘違いしている人もいますが、テイスティングとはワインの品質を確認する行為です。決して、味が好みではない、などと言って違うものを求めるなんてことをしてはいけません。
まず色のチェックをします。ワイングラスの足の部分を持って、白いテーブルクロスやナプキンの上で色味を確認します。そして軽くグラスを回してみてグラスの内側にワインの液体が垂れるその速度をみます。ゆっくり垂れるほど粘度が高い、すなわちコクがあるということになります。同時にワインの中に不純物や濁りがあったりしないかを確認します。
次に香りをチェックします。ワイングラスを軽く回して香りを立たせ、鼻を近づけます。間違ってもグラスに鼻をつけないように注意しましょう。
そして実際に飲んでみます。ワインを一口に含み、舌の上で転がします。プロ級の人は舌の上でジュルジュルと音を立てて、空気と混ぜながらテイスティングしますが、あれは虫歯になるそうですし、また、カッコつけに思われるときもあるので、個人的にはあまりお勧めしません。
万が一に、異常な酸味などを感じたらソムリエ、もしくは店のスタッフに確認してもらってください。問題なければ軽くうなずくなど、大丈夫だよという仕草を相手に伝えてください。