ブランデーについて
ブランデーとは果実酒からつくった蒸留酒のことです。語源はオランダ語の『焼いたワイン』を意味するbrandewijnからきています。フランスではブランデーをオード・ヴィーと言います。
原料果実の種類によりグレープブランデー(ぶどう)、アップルブランデー(リンゴ)チェリーブランデー(さくらんぼ)などがありますが、通常ブランデーといえばグレープブランデーをさします。
造り方は、白ブドウ酒を単式蒸留機で2回蒸留してアルコール分63%前後のスピリッツを造ります。
※ ただしブランデーの製造過程には決まった周期があります。そのことは下記、ブランデーのランク分けの項に記載しています
そうして出来たグレープスピリッツを樽に入れて数年から数十年熟成させ、熟成年数の違うものをブレンドしたのち加水してアルコール分を40%前後に調整して製品化します。
ブランデーの種類
ブランデーの中で質、量ともに世界一の生産を誇るのはフランスです。その中でもコニャック地方で造られるコニャック(Cognac)、アルマニャック地方のアルマニャック(Armagnac)が世界の2大トップブランドとなっています。
その双方とも生産地域や原料ブドウ品種、蒸留法などがAOC法で厳しく規制されています。
コニャックはフランスの西南部に位置し、その土壌によって六つの地区に区分されています。それぞれの地区で味わいが違い、100%その地区産のコニャックには地区名をつけて売ることが認められています。
それ以外のフランス産ブランデーはフレンチブランデーと呼ばれます。このほか、ドイツやイタリア、スペイン、もちろん日本などでも良質のブランデーが作られています。また、ワインの搾りかすを再発酵させ蒸留したかす取りブランデーのマール(フランス)やグラッパ(イタリア)なども有名なところです。
そしてもうひとつ、フランスのブランデーで忘れてならないのがカルバドス(Calvados) です。カルバドスとはリンゴを原料として、ノルマンディー地方で造られるアップルブランデーのことです。
熟成年数によるブランデーのランク
コニャックとアルマニャックにのみ決まっている規定があり、熟成年数の違いによってブランデーのランクを区分けします。それをコントという単位の数で分けていきます。
ブランデーは製造工程の際の周期が決まっており、コニャックは毎年4/1~翌年3月末日、すなわち翌年3月末日までに蒸溜を終えなければなりません。
蒸留した年のコントは「コント00」となります。翌4月1日から樽の原酒はコント0と数えられ、それは翌年の3月末日まで続きます。次の4月1日からがコント1となり、以降4月1日が来るごとにコント数が繰り上がります。
※ たとえば2018年の四月以降に採取したブドウを醸造蒸留したグレープスピリッツは2020年の四月以降に初めてコント1がつくのです。
【 基本のコント数とそのランクのブランデーの実際の平均熟成年数 】
スリースター | (コント2以上) |
---|---|
V.S | (コント2以上)平均熟成年数4~7年 |
V.S.O.P | (コント4以上)平均熟成年数7~10年 |
ナポレオン | (コント6以上)平均熟成年数12~15年 |
X.O | (コント10以上)平均熟成年数20~25年 |
Hors d'âge or エクストラ | (XOよりも高いクオリティ) |
ブランデーの歴史
ブランデーの歴史には諸説ありますが文献によると13世紀、スペイン人の錬金術師で医者であるアルノー・ド・ビルヌーブがワインを蒸溜し、気つけ薬として珍重していたと記されています。その後この液体は命の水(オー・ド・ヴィー)と呼ばれ、広まっていきます。
そして実際にブランデーが世に出ることになった理由には、以下のような偶然が招いた結果でした。
16~17世紀、ヨーロッパは寒波に襲われ、また宗教戦争の影響もあって、ワインの品質が落ちました。オランダ人が輸入していたフランス・コニャック地方のワインも、長い輸送に耐えられず酸っぱくなってしまったため、蒸留して輸送することにしました。しかし、それが意外にもおいしいと評判になり、ブランデヴァイン(焼いたワインの意)→ブランデーとして普及したのです。
また、フランスでは税制改定でアルコール度数に関係なく量に対して酒税がかけられることになり、少量化で税が安く輸送も便利ということで、ワインの蒸留にいっそう拍車がかかりました。特にブランデーに適したワインが採れるコニャック地方は、こうしてブランデーの銘醸地として有名になったということです。
ブランデーの製法
それでは以下、ブランデー(主としてコニャック、アルマニャックについて) の製造過程について触れていきたいと思います。
① 収穫:ブドウの収穫
コニャックやアルマニャックなど、ブランデーの原料はユニブラン(サンテミリオン)という白ブドウが主となります。その白ブドウの収穫からブランデー造りは始まります。
ユニブランは酸味が多く糖度が低いためワインとしてはあまり適さないのですが、逆にブランデーには最適とされています。
その理由はふたつあります。ひとつ目は酸味が多いことです。酸が多いと果汁が酸性になり、雑菌の繁殖を抑制できるのです。また香味成分の生成を促すこともできます。
ふたつ目の理由は糖度が低いことです。糖度が低いと発酵時のアルコール度数が高くなりにくいため、大量のワインから少量のブランデーしか蒸留されません。しかしそのぶん、ブドウの香味成分が濃縮されやすくなるのです。
② 発酵:白ワイン造り
収穫したブドウの皮や種子を取り除きます。そして残った実を圧搾機にかけて果汁を絞ります。皮や種子を取り除くのは白ワインの製造工程とまったく一緒です。
次に、搾り取った果汁を発酵させます。発酵方法はイースト菌を加えての発酵か、自然発酵の二種類。どちらを選択するかは、そのメーカーによります。当然、自然発酵のほうが時間と手間がかかります。発酵時間もメーカーによって様々です。
そうしてアルコール8%前後の白ワインが造られます。通常の白ワインと比べ8%前後と低度数なのは前述したようにブドウの糖度が低いためです。
③ 蒸留:アルコール成分の抽出
発酵工程でできた白ワインを蒸留機に入れ加熱します。蒸留の原理や方法はウイスキー等と同じです。アルコールと水の沸点差を利用して高アルコールの蒸留液を造ります。
※ アルコールの沸点は78.325℃、水の沸点は100℃
蒸留機の中では加熱された蒸気が上部から出てきて、その蒸気を再び冷却することで、アルコール度数の高い液体に戻すことができるのです。アルコール(沸点78.3℃)と水(沸点100℃)の沸点は違うので、その差を利用してアルコールを抽出していきます。
蒸留はコニャックの場合は単式蒸留器で2回、アルマニャックは半連続蒸留器で1回蒸留します。
④ 熟成:長期間、樽に保存する
熟成とは蒸留されたブランデー原酒を樽の中で長期間保管(最低3年~100年以上)することです。
熟成によりブランデーに起こる変化は主に三つです。
- 琥珀色への変化
- アルコール度数の変化
- 香りの変化
蒸留したてのブランデーは無色透明で、70度近いアルコール度数があります。それを樽に入れて長期熟成することで、琥珀色でアルコール40度程のまろやかなブランデーに変化します。しかし熟成によってアルコール度数が40%にまで下がるには、相当の長期熟成が必要になります。そのため若いブランデーは熟成前に加水という工程を行うことによってアルコール度数の調整をしています。
樽の材質はオーク(なら材)。その樽の材質や貯蔵環境(温度や湿度など)によって味が変化していきます。
なお、コニャック・アルマニャックにおいては蒸留水以外にあと三つ、オークチップス、糖、カラメルの添加が認められています。
オークチップスはタンニンを含んだ味わいに調整するために、糖はアルコールの刺激を和らげるために使用されます(全体の2%まで添加可能)。カラメルは色味調整のために使用されます。これらの添加物の使用有無はメーカーによってさまざまですが、自家生産であるプロプリエテールは無添加の所が多いようです。
⑤ ブレンド ⇒ 瓶詰め
樽熟成されたブランデーは通常、そのまま単一の樽から瓶詰めされることはありません(ヴィンテージを除きます)。さまざまな熟成年数の樽同士を調合して製品化します。それがブレンドです。
その際、調合されるブランデーの中の最も若い熟成年数の原液が、そのブランデーのランク(VSOP、ナポレオン、XOなど) になります。
そして調合されたブランデーは瓶詰めされ、市場に出荷されます。
その他ブランデーに関すること
⇒ プロプリテエール(シングルコニャック)